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連載

をんな千一夜 第45話

一女優の短い生涯
石井 妙子

2020年12月号

《中島 葵》

内閣と自民党による、中曽根康弘元総理の合同葬儀が、去る十月十七日に行われた。「国費九千万円をかけて行うべきことか」と野党やリベラル層は打ち騒いだが、私が不思議でならなかったことは、むしろ自民党内の保守派、あるいは右派と言われる人たちが、この日程を許したことだった。
 十月十七日は新嘗祭に並んで神聖にして重要な神事である神嘗祭が宮中や伊勢神宮で行われる日にあたる。そこにあえて〝喪〟をぶつけ、国家的な行事として弔旗を掲げ、秋篠宮皇嗣ご夫妻のご臨席を賜る。これは戦前を知る人ならば動転するほど不敬なことであろう。タカ派で知られた戦中派の中曽根元総理がこれを知ったなら、いったいどう思うのか。ましてや、この人は―。
 三島由紀夫が市谷の自衛隊駐屯地で自決してから五十年。三島の特集が様々な形で組まれているが、中でも話題を集めているのが、映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』である。一九六九年五月十三日、東大全共闘の招きに応じた三島由紀夫が、一千人を超える学生を前に演説、討論をした際の記録フィルムを編集・・・