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社会・文化

スパイ「ゾルゲ」がロシアで脚光

事件の「新事実」も明らかに

2020年12月号

 日米開戦前の東京で大規模なスパイ網を構築し、最高機密情報をモスクワに送った旧ソ連の大物スパイ、リヒャルト・ゾルゲが、戦勝七十五周年のロシアで脚光を浴びている。ロシア各地にゾルゲ像が建立され、連続テレビドラマも放映された。従来機密扱いだったゾルゲ事件関連文書も公開され、謎の多いゾルゲ事件の解明につながる可能性がある。
 プーチン大統領は十月七日、六十八回目の誕生日に際してタス通信のインタビューに応じ、自らの過去に触れる中で、「実は、高校生のころ、ゾルゲのようなスパイになりたかった」と打ち明けた。プーチンがゾルゲを敬愛していたことを公言したのは初めて。レニングラード大学卒業後、旧ソ連国家保安委員会(KGB)のスパイになったプーチンは回想録で、「子供のころスパイ映画を見てKGBにあこがれた」と述べていたが、実際にはゾルゲ事件がスパイになる動機だったことが判明した。
「二十世紀最大のスパイ」といわれるゾルゲは、ドイツ人とロシア人の混血で、共産主義に傾倒してドイツからモスクワに移り、コミンテルン(国際共産党)活動に従事。旧ソ連軍参謀本部情報総局(GRU)にスカウトされ、三年・・・