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連載

日本の科学アラカルト 125

ミクロとマクロの中間 「クラスター科学」の可能性

2021年1月号

 二〇二〇年は「クラスター」という言葉のイメージが悪化した年だった。新型コロナウイルス感染拡大の過程で、報道で多用されて悪い印象が定着した。
 本来、英単語としてのクラスターには「塊」や「集団」といった意味しかない。感染経路を辿れる集団をクラスターと呼称したのだが、本来は「感染者クラスター(患者クラスター)」と呼ぶか、わざわざ横文字を使わずとも「感染者集団」とすればよかったはずだ。
 物質科学の世界でもクラスターという言葉は用いられる。ずばり、原子や分子の塊のことだ。
 人類は物質を細かくしていくことに注力してきた。世の中の物質を構成する粒子はなんなのか、その追究の果てに分子や原子の発見がある。原子の内部にもクォークなどの粒子があるが、物質・材料科学の分野では通常、原子が最小単位と考えていいだろう。主に原子や分子といったミクロの世界での反応や、それらが大量に集合した状態(バルク)での物性などを研究してきたのだが、実はその「中間」というべき状態としてクラスターがある。分子や原子が数十個、もしくはそれ以上の数集まっている塊のことだ。
 有名なものでは・・・