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連載

本に遇う 第253話

桜の樹の下は嘘の山
河谷 史夫

2021年1月号

 暮れにテレビ朝日のドラマ「七人の秘書」を見ていたら、脱法行為を暴かれた大官が「私は何にも知らない。秘書がやったことだ」と叫ぶシーンがあって、つい安倍晋三前首相を思い浮かべた。「桜を見る会」で「ない」と言っていたホテルの領収書が出て来たが、安倍もこの科白を口にするだろう。ちなみにこのテレビ局の会長は安倍との会食族の一人と聞いた。
 不祥事を抱えた政治家や高級官僚が「秘書が、秘書が」と秘書のせいにする光景をリクルート事件でさんざん見た。「妻が、妻が」というのもいた。責任転嫁して恥じないのは、お偉方の定法である。
 梶井基次郎は「桜の樹の下には屍体が埋まっている」と言ったが、新宿御苑の桜の樹の下には安倍の真っ赤な嘘が埋まっていた。何かと「お友だち」を優遇し、「モリ・カケ・サクラ」疑惑を追及されながらことごとく言い逃れたが、要するに嘘つきだったのである。
 毎年四月に開かれる首相主催の「桜を見る会」の予算膨張が目に余る。安倍政権になって招待者が異常に増大し、その中には安倍の選挙区後援会の会員が多数含まれている。これは公私混同ではないかと、二〇一九年十一月八日、共・・・