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連載

Book Reviewing Globe 441

米国が世界から学ぶべき時

2021年2月号

 トランプ前米大統領がコロナに関して国家非常事態宣言(二〇二〇年三月十三日)をした一週間後、三人の社会科学者が、コロナ禍における米国人の行動変容に関する調査結果を発表した。それによると、人々が、手洗い、ソーシャル・ディスタンシング、自己隔離をするか否かを決する最大の要素は、地域でも年齢でもなく支持政党だった。共和党と民主党のどちらの政党に属するかが人々の行動を分かつ。米国の政治はどの政策もその賛否をめぐる議論が、アイデンティティをめぐる敵味方の文化戦争になってしまう。
 同じころ、コロナの感染が広がってくるにつれ米国の企業はレイオフを始めた。米国の労働人口に占める少数民族の割合は三七%だが、この時点での新たな失業者のうち五七%は少数民族だった。コロナは米国内の格差をさらに拡大する結果となった。
 グローバル化に伴って、世界の富裕国と貧困国の間の所得格差は縮小してきたが、コロナはその趨勢を反転させ、両者の間の格差を再び、拡大させつつある。コロナ後、開発途上国、なかでも貧困国の債務危機がやってくるだろう。向こう二、三年、世界では七千万人から四億三千万人が再び絶対的貧困層・・・