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経済

電通本社ビル売却計画の波紋 社内では「割増退職金」期待する声

2021年2月号公開


 電通本社ビルの売却計画が浮上し社内には波紋が広がっている。
 約三千億円という予想価格が報道されているが、本社ビルの土地と建物の簿価は半分程度であり、実際にこの価格で売却されれば特別利益を計上することになる。
 同社は二〇一四年、電通テック本社だった「電通築地ビル」を住友不動産に売却した。翌年に三百人規模の早期退職者を募集したが、「この時の割増退職金の原資は築地ビルの売却益だった」(電通関係者)という。このリストラに応募した百人程度は、「これ以上売るものは残されていないだろうと判断した人が多かった」(同前)。当時、応募を逡巡した社員らが注目するのは、今回の特別利益を使って改めて早期退職募集があるのではないかという点だ。業績悪化に歯止めがかからず、「逃げ出すなら最後のチャンスになると考える中高年社員が多い」(同前)。
 汐留の本社ビルは来客数の多い電通向けの特別設計でエレベーター数が多いなど、他の企業では使いにくいため、優先交渉権を得たヒューリックは、一部フロアの借り手探しに苦労しそうだ。


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