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連載

《世界のキーパーソン》 キャサリン・タイ(米国の次期通商代表)

対中通商戦争の新たな「指揮官」

2021年2月号

  キャサリン・タイが家族の秘密を知ったのは、十四年前だという。二〇〇七年、米通商代表部(USTR)に勤務が決まり、自身と家族について書類を埋めていた時、自分の国籍取得が父母より五年早かったことを知った。
「何てこと、家族で私が最初に米国籍を取得したなんて」
 米国で生まれた子供は、その瞬間から米国人だ。移民として米国にやってきた父母は後に、市民権を取得した。タイは、「そのことを知った時、ものすごい感動と、強烈な愛国心に襲われた」と言う。そんな米国政府のために働けるとは、何と光栄なことかと感じた。
 タイの両親は中国生まれ。第二次世界大戦後に台湾に渡り、その後、夫婦で大学院生として、米国の東海岸にやってきた。学業を終えた後、父親はウォルター・リード陸軍医療センターに、母親は米国立衛生研究所に勤務した。台湾からやってきた科学者一家はかくして、ワシントン暮らしとなった。
 タイは、シドウェル・フレンズ・スクールに入学。歴代大統領の子弟が通った名門だ。その後、イェール大学、ハーバード大学ロースクールに進んだ。
 卒業後は、民間企業の・・・

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