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社会・文化

学問の自由を殺す「裁判所」

京都芸術大「セクハラ判決」の衝撃

2021年2月号

「学問の自由は、これを保障する」
 日本国憲法第三章の第二十三条にこうある。
 英国の権利章典やフランスの人権宣言などには「学問の自由」を個別に規定した条文はなく、米国も同様だ。一般には、「表現の自由」に学問の自由の概念も包摂されているからと考えられている。日本国憲法では第十九条で「思想・良心の自由」を、第二十一条では「表現の自由」をそれぞれ保障している。あえて独立させたのは、戦前の滝川事件や天皇機関説事件などの反省に立つものだが、それだけ重要な権利であるということは疑いようがない。

極めて幼稚な判断

 しかし、これを揺るがしかねない「判決」が昨年末に東京地方裁判所で出た。京都芸術大学(旧・京都造形芸術大)の公開講座でわいせつな作品などを見せられて精神的苦痛を負ったとして、元受講生が学校法人側に約三百三十三万円の慰謝料などの支払いを求めていた訴訟で、東京地裁の伊藤繁裁判長は、昨年十二月四日、学校側の責任を認め、約三十五万円を支払うように命じた。
 問題になった講座では、四肢が切断・・・