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WORLD

危ぶまれるプーチンの「精神状態」

「米欧の謀略」に怯える日々

2021年3月号

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、「ハイブリッド戦争」の恐怖におびえている。反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の動きが、米欧の支援を受けていて、さらに大きな策謀があるのではないかと警戒しているのだ。
 ロシア軍内部では、米欧の工作を未然に防ぐため、北大西洋条約機構(NATO)に限定的な先制攻撃を仕掛けるべきとの声も上がっている。北欧などロシアの近隣諸国では相次いで、近年では例のない警戒態勢に入っている。

北極圏であわや空中戦

 今年二月上旬、ロシア空軍はただならぬ緊張に包まれた。米軍がテキサス州の基地からB1戦略爆撃機四機と要員約二百人を、ノルウェーのオーランド空軍基地に派遣することが伝えられたからだ。
 ロシア西部サラトフ近郊のエンゲルス空軍基地にある「ツポレフ160」戦略爆撃機二機に出動命令が出て、二機は北極圏に向けて全速力で北上した。ノルウェー空軍はF16ジェット戦闘機二機をスクランブル発進させ、両者はノルウェー最北端沖の公海上空で遭遇した。ツポレフ二機はやがて大きく旋回・・・