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Book Reviewing Globe 442

熾烈さ増す「海洋戦略競争」

2021年3月号

 中国の「一帯一路」のうち、世界の戦略地図を根本から変えるのは「海のシルクロード(MSR)」の方である。
 中国は、一九九〇年代から石油・ガス輸入のシーレーン防衛のため南シナ海、インド洋、そしてマラッカ海峡の海洋防衛を進めてきたが、近年は一段と海軍主義(navalism)的野心を露わにしている。世界屈指の海軍力を保有してこそ、世界の超大国たる資格も威信も持つとの信念である。中国の「海への戦略的意思」は、東シナ海(西太平洋)、南シナ海、インド洋へと投射されている。中国は現在、国産の空母による三空母機動部隊体制への準備を着々と進めている。
 しかし、中国の海洋パワーの最大の特徴は、地経学的パワーを中心に据えていることにある。
 ハンバントータ(スリランカ)、チャウピュー(ミャンマー)、グアダル(パキスタン)、ジブチなどの港湾を急ピッチで構築した。ジブチには世界のどの国よりも巨大な海軍基地をつくった。他の港湾もいずれ中国の海軍基地として租借することを想定しているだろう。
 もう一つ、中国はジオ・エンジニアリングの技術と経験を生かして、南シナ海における暗・・・

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