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経済

日本製鉄「東京製綱TOB」の赤っ恥

元名門企業の哀れな「内輪もめ」

2021年3月号

 日本製鉄は、出資先でワイヤー製品最大手の東京製綱に対して今年一月下旬、敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けた。最近はやりのグループ会社の完全子会社化と一瞬連想するが、取得上限は二〇%未満。筆頭株主としての権利は現状と何ら変わらず、関係者以外には意図はみえない。要は日鉄が長期に居座る東京製綱のトップを退任させ、会社を密かに意のままにしたいということだが、退任を迫られたトップも日鉄出身。内輪のけんかだが、それをTOBで解決するのは東京製綱の一般株主を愚弄するものでしかない。日鉄は落ちるところまで落ちた。

人間関係のこじれと飽くなき欲

 東京製綱に対するTOBは三月八日までで、現在の持ち株比率九・九一%を一九・九一%にまで引き上げる。TOB公表直前の株価に対し、三六%強のプレミアムを乗せた一株一千五百円で買い付けを実施中だ。日鉄側はそれ以上、買い付けるつもりもなく、TOB成立後に「子会社や持分法適用会社にするつもりもない」(日鉄幹部)という。東京製綱の上場も維持する方針だ。
 日鉄のTOBには二つの・・・