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連載

西風 479

京の都に息づいた「カフェ文化」

2021年4月号

 客に茶を供す「喫茶店」の源流のひとつは時代劇にも登場する茶店だろう。古くは鎌倉時代から、大きな寺社の参道などで、参詣客らに茶を振る舞う「一服一銭」と呼ばれる店が出ていた。歴史的な資料で最も古いものは京都で確認されている。一四〇三年に東寺が、門前で店を開く茶売り人に対して誓約書を提出させており、一服一銭業者が制御する必要があるほど隆盛だったことがわかる。
 茶を愉しむ文化は上流階級では茶道として広がる一方で、庶民の間でも茶店などの形で支持されてきた。現在の喫茶店で出されるコーヒーが日本に入ったのは江戸時代になってからといわれる。明治になると神戸を中心にコーヒーを出す店が出始め、東京では知識人のサロンとなる店や、女給がサービスをする「カフェー」が多く登場する。カフェーはその後大阪や京都にも上陸するが、前後していわゆる純喫茶と呼ばれる、現在の業態に近い店も多く作られた。
 長い歴史を持ちながら、新しいものも受け入れてきた京都には現在、今風なカフェが多くあり、ひとつの観光資源になっている。
 米西海岸発の「サードウェーブ」と呼ばれる新しいコーヒー店の代表格、ブル・・・