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経済

《クローズ・アップ》細谷 敏幸(三越伊勢丹HD新社長)

社業「大炎上」の火消し役

2021年4月号

 文字通り「ドン底」での社長交代になった。四月一日から三越伊勢丹ホールディングス(HD)の社長に就任した細谷敏幸氏の先行きは前途多難だ。
 同社の二〇二一年三月期の決算見通しは、連結売り上げ八千億円と、前期比で三千百九十億円も落ち込む。最終損益では四百五十億円の赤字となり、前期の百十一億円の赤字から大幅に拡大する。同社は、一〇年三月期に閉店店舗の減損処理などの影響で最終損益が六百三十五億円の赤字に転落したことがある。しかし今回は売り上げ減により、第3四半期までに営業利益の時点でも赤字になっており、まさに本業が「火だるま」の状態なのだ。
 一九六四年生まれの細谷氏は、早稲田大学を卒業後、八七年に伊勢丹に入社した。百貨店の王道ともいうべき婦人服部門で頭角を現した後、婦人雑貨や宝飾時計などの統括部長を歴任してきた。
 一七年三月に大西洋・元社長が突如解任された「クーデター」が発生し、杉江俊彦氏が社長に就任すると、細谷氏はHDの執行役員となり、本部の経営企画部長に抜擢された。翌年には子会社の岩田屋三越(福岡県)の立て直しのために社長として送り込まれ、わずか一年で過・・・