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中国経済「虚構」の急回復

米中対立で誇大な「宣伝戦」

2021年4月号

 中国はコロナ感染による経済危機を乗り越え、昨年、主要国で唯一のプラス成長を果たした。習近平政権の手腕に世界は刮目したが、公表されたマクロ統計と中国の企業や庶民が感じる景況感には大きな開きがある。現実に鉱工業生産は伸びても、個人消費は停滞を続け、雇用も所得も増えている気配はない。日米、欧州が異例の金融緩和を続けるなか、中国人民銀行はバブルとインフレへの警戒に軸足を移している。中国は米中冷戦での対米優位を世界にアピールするため、経済実態、実力を過大に宣伝し、世界はそれに惑わされている恐れがある。
 中国の国内総生産(GDP)伸び率は昨年、二・三%増となったが、内実は政策当局者を悩ます大きな異変が起きていた。第三次産業の成長率が二・一%にとどまり、第一次産業の三・〇%を下回ったのだ。鄧小平氏の改革開放政策によって誕生した個人農に対して生産請負制が導入され、食糧生産が劇的に伸びた一九八〇年代以来の農林水産業とサービス業の成長率の逆転である。零細商店や中小企業が主体で、未熟練労働者向けの雇用の受け皿にもなってきた第三次産業がコロナ感染で受けた打撃の深刻さを映し出している。
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