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政治

政治家の嘘で汚れた「東京五輪」

どこが「安全で安心の大会」なのか

2021年5月号

 世界を欺いて手にした果実に虚偽を重ね塗りした毒リンゴを作り、人々はそれを口にした段階でやっと、騙されていたことを知る。東京オリンピック・パラリンピック(東京五輪)の一年遅れの強行開催と、東京電力福島第一原子力発電所の事故による汚染水から放射性物質を減じた処理水を海に放出する決定は、できの悪いダークファンタジーを見ているようだ。
 国際オリンピック委員会(IOC)で東京五輪の準備状況を監督する調整委員長ジョン・コーツが四月十三日、「必ず開催する」と明言し、くすぶる中止論に開会式まで百日となるタイミングで最後通牒を突きつけたのも、「ぎりぎりの判断」を演出しただけで、結論は最初から決まっていた。
 IOCも、大会の放映権を持つNBCのある米国も、来年に北京冬季大会を控える中国も、それぞれの損得勘定から東京五輪の開催を望んだ。日本では総理大臣が安倍晋三から菅義偉に代わり、内閣支持率が高いうちに衆議院を解散できないまま、東京五輪の盛り上がり如何に政権の命運をかける状況となった。四月十六日の日米首脳会談後の共同記者会見で、外国メディアの「東京五輪開催は無責任では」との質問を無・・・