三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

連載

《世界のキーパーソン》アンナレーナ・ベアボック(ドイツ「緑の党」首相候補)

「メルケル後」を狙う二女のママ

2021年5月号

 ドイツの「緑の党」は、世界の環境政党の先駆だが、一九八〇年の結党以来、総選挙に「首相候補」を擁立したことがなかった。
 九月二十六日投票の今年の総選挙には、その縛りを破って、初めて首相候補を立てる。ベアボックは四十歳。閣僚経験はおろか地方行政に携わったこともない。二女のママである。
 同党がカケに出たのは、保守のキリスト教民主同盟(CDU)、キリスト教社会同盟(CSU)の姉妹政党ブロック(通称ウニオン=同盟)との差が、ぐっと縮まってきたことによる。四月のARD世論調査では、同盟二八%に対し緑の党二一%。新型コロナウイルスの感染拡大で、健康や環境に対する国民の意識が高まった。緑の党は経済界に何の気がねもなく、「感染対策最優先」を唱える。
 同党は共同代表制で、ベアボックと並んで、ロベルト・ハーベックという五十一歳の男性が代表職にある。本職は著述業だが、北部のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州副首相を務めたことなど行政経験はこちらが上。弁舌が巧みで、ファンも多い。ハーベックは「首相候補はもちろん意識した」というが、「選挙で勝つ」ことを優先して、ベアボックに譲っ・・・

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます