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社会・文化

コロナ禍という「公害」の教訓

色川大吉(歴史家)

2021年6月号

 ―新型コロナ禍は人類に何を問いかけているのでしょうか。

 色川 今般のパンデミックと地球温暖化は、根底でつながっているのではないか。環境変化によってウイルスを媒介する動物の生息空間が破壊されたという因果関係だけを言っているのではない。コロナ禍が世界中の人々に強制的な行動変容をもたらしたおかげで、北京では青空が見える日数が増え、ベニスでは運河の水も澄んだ。コロナ禍と地球温暖化は一本につながっているようだ。ごく短期間に地球規模で人々の行動が変わるのは歴史上初めてのこと。南極や北極の氷山が崩れ落ちたため、水没しそうな島国もあるという。近ごろ予測不能な洪水や豪雨、山火事が続発している。そんな自然災害の元凶である環境破壊をコロナ禍が止めるのだとしたら、なんとも皮肉な話だ。

 ―地球温暖化対策を求める声は高まっており、SDGsに対する認識も深まってきましたが。

 色川 SDGsには十七の目標が盛り込まれているが、実際の優先度は、貧困や飢餓の撲滅、保健と教育の保障の・・・