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経済

Jパワー「続石炭宣言」の迷妄

「脱炭素後進国」の象徴企業

2021年6月号

「うまいやり方だった。ステークホルダーに脱炭素の〝姿勢〟を見せるには十分だ」
 ある大手電力会社の関係者は、四月十六日のJパワー(電源開発)の会見についてこんな感想を漏らした。Jパワーはこの日、これまで頑なに計画を維持し続けてきた山口県宇部市の石炭火力発電所の新設を断念したのだ。Jパワーといえば名うての石炭推進企業であり、石炭で発電した安い電気を大手電力会社に卸してきた。石炭火力からの撤退はJパワーの先細りを意味し、恩恵を享受してきた大手電力会社も困るはずだが……。「いや大丈夫。石炭火力はこれからも続けてくれるみたいだから」(前出の大手電力関係者)。宇部の石炭火力撤退は煙幕―それが、業界共通の見方だ。
 Jパワーが新設を断念した西沖の山発電所は、六十万キロワットのプラント二基で構成している発電所で、二〇二六年四月に一号機、同年十月に二号機が運転開始する計画だった。もともとはJパワー、宇部興産、大阪ガスの三社が出資していたが、大ガスが一九年四月に撤退したことにより、二社のみでやることに。その後も計画を縮小しながら細々と実現を探ってきたが、つ・・・