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経済

5大商社の決算は「奇々怪々」

首位・伊藤忠の巧妙なる「裏技」

2021年6月号

 おそらく会長CEO・岡藤正広の受け売りだろう。
「商人は水であれ。お客さまに合わせて丸にでも四角にでもなれるのが商社の神髄です」
 伊藤忠商事の社長・石井敬太は五月十二日、二〇二〇年度連結決算と新たな中期経営計画の説明会に臨み、やや緊張の面持ちで経営の覚悟を語った。二日前、純利益四千十四億円と五大商社の首位を勝ち取った決算は発表済み。すでに三菱商事を上回っている株価、時価総額と合わせて悲願の三冠に輝いたことを、「十年にわたり、実直に商売を積み上げてきた証」とし、言外に社長・会長在任十二年になる岡藤を称揚した。
 さらに二三年度までに商社初の六千億円の純利益を目指すという。それを実現する三カ年中計には、①「マーケットイン」による事業変革、②「SDGs(持続可能な開発目標)」への取組強化の二点が掲げられた。市場の二点の要請に柔軟に対応し、伊藤忠の機動性を発揮するというわけだ。
 水は方円の器に随う―。なるほど、水のように融通無碍な経営手法こそ伊藤忠の真骨頂だろう。しかし、それは下手をすれば、原理原則を忘れ、私利私欲に傾く独善に陥る。果たせるかな、ト・・・