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南米電力市場で進む「中国支配」

自然破壊と欠陥工事に汚職の連鎖

2021年7月号

 南米の電力事業が、次々と中国資本の傘下に置かれ、深刻な社会・経済問題を引き起こしている。南米に進出する中国企業は、巨大ダムや水力発電所建設に着手しているが、あちこちで自然破壊や現地住民との紛争を生んでいる。
 エクアドルの観光名所サン・ラファエル滝は、落差百五十メートル。アマゾン川水系のコカ川の水が豪快に落ちるさまに、毎年数万人の観光客が引き付けられてきた。
 事件は、二〇二〇年二月二日に起きた。雄大な滝の水があっという間に、糸のように細くなった。滝の上流で河床が大規模崩壊し、水が滝に届かなくなったのだ。滝はやがて、完全に消滅した。エクアドル当局は一帯を閉鎖した。
 滝の消滅という、滅多に見られない現象を引き起こしたのは、二十キロメートル上流にあるコカ・コード・シンクレア・ダムだった。
 ダムは一〇年の着工で、一六年に完成した。中国のシノハイドロ(中国水利水電建設集団)が二十二億五千万ドルで請け負った。後述するように、エクアドル政府は、事業費の大半を中国からの融資でまかなった。
 建設時の環境アセスメントは、ずさん極まりなかった。一四・・・