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経済

《クローズ・アップ》中埜 裕子(ミツカンHD社長)

「円満」な家族経営は続くのか

2021年7月号

 事業は長女へと引き継ぎ、オーナーとしての立場は次女に継承させる―。その意思を明確に打ち出した人事だろう。
 五年間空席になっていた食酢最大手、ミツカンホールディングス(Mizkan Holdings=HD)の社長に五月下旬、創業家当主・中埜和英会長の長女で専務だった裕子氏の就任が決まった。また同じく専務をつとめていた次女の聖子氏は副社長に昇格。同時にグループの資金調達・運用などを担うミツカンアセット、不動産などの資産管理会社「中埜酢店」両社の社長にも就任した。
 ミツカンHDは二〇一四年に初めて非創業家出身者を社長として起用した。ただ健康上の理由から一六年退任。以降、社長を置かず経営執行の役割を「常務会」に委ねてきた。しかしその常務会も二〇年十月で廃止。和英会長や妻で副会長の美和氏に裕子・聖子両専務を加えた中埜ファミリーでグループを取り仕切る「完全なる家族経営」(関係者)へと移行し、事業承継の道筋を探っていた。
 新社長に就任した裕子氏は成蹊大学卒の四十五歳。一九九九年にミツカングループ本社(現ミツカンHD)に入社し、二〇一六年専務に就任。二〇年十一月か・・・