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異常気象に「無力」な西欧気候学者

ドイツ洪水が問う「科学の信頼」

2021年8月号

「想定外の自然災害」「経験したことのない気象」―。こんな言葉が最近はすっかり定着する一方で、「なぜ正確に予測できないのか」という批判が、専門家や科学者に対して寄せられている。
 今年の北米大陸での猛暑や、七月にドイツやベルギーで起きた水害について、西欧では「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」や気候学者の失敗を指摘したり、気候変動予測の時代遅れを問うたりする声が上がっている。
「ドイツ語にはこれほどの被害を表現する言葉がありません」。アンゲラ・メルケル独首相は七月十八日、ラインラント・プファルツ州の被災地を訪れた際、激甚災害を前に「言葉もない」と嘆いた。
 現場の町シュルトは、川が円形に蛇行する内側に位置し、一千年以上の歴史を持つ。今回の豪雨で、家々が土台ごと流され、がれきと泥の無残な姿に変わった。過去にも水害はあったが、今回ほどの惨事はなかった。まさに、「一千年に一度の洪水」だった。

IPCCはもはや「役立たず」

 気候学者や環境政党「緑の党」は、この時とばかりに「地球温・・・