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台湾軍首脳「スパイ事件」の重症度

「親中体質」に深まる米国の不信

2021年9月号

 台湾の防諜・捜査機関である法務部調査局は八月十八日夜、台湾空軍の退役少将・銭耀棟氏と、陸軍の退役中佐・魏先儀氏を国家安全法違反の疑いで身柄拘束、取り調べを始めた。二人の元上司は軍ナンバー3だった張哲平氏。中国人民解放軍の工作員と接触を繰り返していたこの大物軍人に捜査の手が伸びれば台湾史上最大のスパイ事件に発展する。そして蔡英文政権には、この事件に力を入れなければならない理由がある。
 張氏は軍ナンバー3の国防部(国防省)軍政副部長(筆頭次官)などを歴任した。国防部長に次ぐ軍ナンバー2の参謀総長に就任する寸前の七月、「スパイ疑惑」で閑職の国防大学長に左遷になった。謝と名乗る、香港の企業経営者を偽った中国人民解放軍政治工作部広州支部の工作員の男性と台北市郊外などで複数回会食していた。
 台湾紙記者によれば、中国軍の情報機関は台湾空軍の情報をとりわけ重視する。空軍出身の張氏は、篭絡したい「最重要人物」だった。
 中国軍は台湾空軍の訓練状況や人員配置、飛行機の性能などの情報を喉から手が出るほど欲しがっている。台湾北西部の新竹県と苗栗県の中間部にある楽山の頂上に作・・・