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社会・文化

衰弱する農林族「コメ議員」

「食糧政策」は誰が仕切るのか

2021年9月号

 かつては「総理・総裁の登竜門」と呼ばれるほど実力者がひしめき合っていた「自民党農林族」の劣化が著しい。コメ政策を仕切ってきた幹部が引退する一方、後継となるべき有能な中堅・若手が育っておらず、事実上「畜産族」としての性格が強まり総体としては凋落が続くだろう。
「誠に不本意、残念だ」―大阪堂島商品取引所(現・堂島取引所)が申請したコメ先物取引の本上場申請が八月六日に不認可になると、同取引所の中塚一宏社長は悔しさを露わにした。同社長は野田佳彦政権の金融担当相などを歴任したため、コメとの関わりに意外感があるかもしれないが、京都大学卒業後、農林族の第一世代のリーダーだった丹羽兵助元労相の私設秘書を務めたのが政界入りの原点だ。二〇〇〇年の衆議院議員選挙で初当選する前まで自由党の事務局に勤務し、小沢一郎党首の側近として農業政策の立案にも関わり人脈もある。
 それだけに、様々な情報を集め「今回こそ認可される」という感触を得ていたのだろう。万が一不認可の場合はこれまで四回延長してきた試験上場の再延長は申請せず「完全撤退する」と公言し、退路を断って申請に臨んだ。結果的に中塚社長の強硬・・・