三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

中東緊迫「次のアフガン」はどこか

タリバン型「政変ドミノ」の現実味

2021年9月号

 イスラム武装勢力「タリバン」がアフガニスタンで権力を掌握したことで、中東全域で「次はどこか?」という恐怖が広がっている。イラクやシリアのクルド人居住地域から、サウジアラビアなど湾岸産油国まで、中東では多くの政府や民衆が、米軍を自らの安全保障の拠り所にするからだ。
 中でも神経質になっているのは、イラクである。アフガニスタン同様に、二〇〇一年の米同時多発テロ事件後に米軍の侵攻を受け、その後も形と規模を変えながら、政府存続を米軍駐留に頼ってきた国だ。特にクルド人自治区の不安は大きく、カブール陥落後には連日、「アフガニスタンの次はイラクか?」という、ドミノの恐怖が論じられている。

クルド人自治区の凄惨な暗闘

 イラクのクルド人自治区は、人口七百万人。イラク北部に位置し、イラン、トルコ、シリアと国境を接している。それぞれの国境の向こう側には、同胞であるクルド民族の居住地域が広がる。四カ国総計のクルド民族は三千万人とされる(四千万人以上との推計もある)。それぞれの国で弾圧を受けているため、自治の度合いが強い・・・