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米国「アフガン放棄」の冷徹

次は中国が「泥沼」へ

2021年9月号特別リポート

 今年もまた九月十一日がやってくる。米同時多発テロ事件から二十年目に、米国の首都ワシントンの話題を「アフガニスタン」が再び独占しているのは、歴史のいたずらなのだろうか。
 イスラム武装勢力「タリバン」が八月、アフガニスタンのほぼ全土を制圧したことで、世界では「ジョー・バイデン米大統領の大失策」「米国凋落の象徴」といった論調があふれた。
 だが、ユーラシア大陸の地政学を精査すれば、こうした認識が時期尚早な的外れであることが分かる。バイデン政権はしばらく面目失墜を味わうが、米外交の長年の重荷から切り離されることで、本来の民主党政権の目標に進む余地が開けるだろう。
 代わってユーラシア大陸の覇権を目指す中国は、「地獄の門」を開けつつある。ソ連と米国という、世界帝国を次々と吞み込んだ深淵は、共産主義の不信心者にとっても例外にはならないだろう。

タリバンを動かすのは何者か

 時計の針を、二〇〇一年九月十一日に戻そう。
 この朝、ワシントンの連邦議会には、朝食を囲む三人の姿があった・・・