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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》厚労省「記者クラブ」

コロナ「官製報道」で国民を誤導

2021年9月号

 経験のない事態に直面した時の素人が「お上」や「専門家」の意見に頼るように、政府の危機対応を報じるメディアが役所や偏った専門家に情報を依存し、不正確な発信を繰り返してしまう。
 二〇一一年の東京電力福島第一原子力発電所の事故後、文部科学省の放射線測定装置の誤ったデータをそのまま垂れ流し、「マスゴミ」と批判された日本のメディアの習性は、新型コロナウイルス(以下、コロナ)対策でも首をもたげた。その要因に挙げられるのが、「厚生労働省記者クラブ」の現状である。
 記者クラブは報道各社で構成される任意団体で、省庁や業界団体の取材で加盟社の意向をとりまとめたり、省庁や団体の説明を受ける機会を設定したりする。源流は、第二次世界大戦後、連合国軍総司令部(GHQ)による報道の締め付けに単独で対抗するよりも団結した方が有利と考え、報道各社が親睦組織を作ったことに遡る。
 米国にも、現地の有力メディア以外は様々な条件をつけて事実上排除している省庁や団体があるから、海外メディアとの比較による日本の記者クラブに対する紋切り型の批判は公正と言い難い面もあるが、厚労省クラブの実態には考・・・