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メソポタミア「渇水地獄」の壮絶

「肥沃な三日月地帯」が不毛の地に

2021年10月号

 古代メソポタミア文明を育んだティグリス川とユーフラテス川で、空前の干ばつが起きている。両川の源流であるトルコで、昨年から乾燥と水不足が悪化していることに加え、流域の農業・生活用水利用が近年激増したためだ。
 各国とも、水資源確保のためダム建設を進め、国際的な水争いは激化する一途だ。下流国のシリアとイラクは「トルコがダムで水を堰き止めているのが原因」と激しく非難している。
 今年の夏は、バグダッドで最高気温の平均が七~八月と連続で四十四度に達するなど、各地で猛暑と干ばつが極端な形で進行した。農村部では「もはやここで暮らすのは無理」として村を離れる人も増えている。人類の文明揺籃の地で、黙示録的な気候変動の被害が起きている。

ユーフラテス川が“小川”になった

 八月末にフランスのAFP通信が配信した写真は、衝撃的だった。
 ユーフラテス川がトルコからシリアに入り、アサド湖(貯水湖)に注ぐ一帯は、ふだんなら水量がとても多く、シリアが世界に誇る農業地帯である。{b・・・

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