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経済

デジタル通貨も「周回遅れ」の日本

今さら「新一万円札」の時代錯誤

2021年10月号

 途上国が中央銀行デジタル通貨(CBDC)を開発、発行する動きが急展開している。ナイジェリア中央銀行が十月一日からデジタル通貨の試験運用を始めたほか、ガーナ、モロッコ、ブータンなども発行に向け動いている。中米のエルサルバドルはCBDCではないが、仮想通貨のビットコインを法定通貨に採用した。主要国では中国がCBDCの実用化の先頭を走り、研究段階にとどまる先進国を引き離し、新たな国際送金、決済の枠組みで途上国に強い影響を与えつつある。こうした潮流に対して、日本は新一万円札紙幣の印刷を開始するなどデジタル化への逆走、暴走で世界を唖然とさせている。
 ナイジェリアは通貨「ナイラ」のデジタル版となるCBDCの「eナイラ」の運用を開始。スマートフォンのアプリにeナイラをチャージして店舗での支払い、スマホ間での送金、振り込みなどに使う計画。リアル通貨との併用になるため、「中央銀行の通貨管理や金融政策に変わりはない」とナイジェリア政府は表明しているが、新規の紙幣の発行は抑制すると関係者はみている。
 ナイジェリアがCBDCの導入に動いた理由は大きく三つある。第一に、国民のうち銀行口・・・