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連載

日本の科学アラカルト 134

ノーベル賞の有力候補 進化する「次世代太陽電池」

2021年10月号

 今年もノーベル賞の季節がやってきた。十月四日の生理学・医学賞を皮切りに、物理学賞、化学賞、文学賞、平和賞と続き、十一日の経済学賞の発表がトリとなる。
 九月九日、優れた研究者に贈られるブレークスルー賞が発表され、日本人が二人選ばれた。同賞はグーグル創業者らが二〇一二年に始めたもので、三百万ドルという高額賞金で知られている。今年は数学部門で京都大学の望月拓郎教授が選ばれ、基礎物理学部門で東京大学の香取秀俊教授が受賞した。近年、ブレークスルー賞を受賞した研究者が後にノーベル賞を受賞するケースもある。ノーベル賞に数学部門はないため望月教授は難しいが、香取教授は物理学賞の有力候補と言える。香取氏は、世界で初めて光格子時計を実現した研究者だ。これは、平たく言えば史上最も正確な時計だ。現在、世界的に「一秒」の基準になっているセシウム原子時計の一千倍の精度を持ち、「三百億年に一秒」しかずれない。従来の時間の概念を変える発明であり、極めて画期的。今年、ノーベル委員会が香取氏を選んでも不思議ではない。
 過去にノーベル賞候補となった研究者も、亡くならない限り候補であり続ける。一七年・・・