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連載

本に遇う 第262話

コロナとつきあう法
河谷 史夫

2021年10月号

 諸君は、かのウイルス博士を御存じであろうか? 御存じない。それは大変残念である。諸君は、ウイルス博士が的外れなコロナ対策に怒りまで覚えていたのを御存じであろうか? 御存じない。それは大変残念である。諸君は、「ウイルス学者は、ウイルス研究で結果を出す」を信条とする博士が警鐘の書を公にしたことを御存じないであろうか? ない。嗚乎。
 博士の名は西村秀一。一九五五年生まれ。山形大学医学部助手から世界最大の感染症対策機関であるアメリカの疾病対策予防センター(CDC)へ留学して研究員、それから国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)ウイルス一部主任研究官を経て国立仙台病院(現国立病院機構仙台医療センター)ウイルスセンター長。呼吸器系ウイルス感染症が専門である。
 博士が「コロナと正当につきあう法」を述べた本は、昨年の十月と今年の六月に出版された。
「何を言おうが正論さえ貫いていれば恐れるものはない。定年間際であり、これから出世しようとか、どこかから勲章をもらおうなどという気持もまったくない」と言い切り、日本経済新聞記者井上亮というよき聞き手を得て、思うところを語っ・・・

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