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政治

新官邸官僚「嶋田秘書官」の魂胆

経産省内閣「再稼働」への深謀

2021年11月号

 前途は険しい。岸田文雄政権が発足した十月四日の前週、経済産業省はこう牽制を受けていた。
「経産省は、本当にそれでいいのか!」
“それ”とは、首相・岸田の政務秘書官に登用された嶋田隆―。言うまでもなく、官邸の陰の司令塔へ異例の転身を遂げた同省の元事務次官である。その人事が自民党二階派の一部は気に入らず、元経産相・林幹雄の周辺から辞退を促されたのだ。
 同省幹部は「また残党の嫌がらせか」と怨嗟の声を上げた。かつて嶋田が福島第一原発事故後の東京電力へ出向し、阿鼻叫喚の闘争の末、企画・総務系の守旧派幹部を粛清したことは周知の通り。十年近くが経っても、残党の遺恨は消えず、自民党のパイプを使って圧力をかけてくる。嶋田の人事は官民に波紋を広げたが、同じ頃、永田町・霞が関ではもうひとつのサプライズが起きていた。
〈やむにやまれぬ大和魂〉〈心あるモノ言う犬〉
 こんな矯激な言辞を弄し、与野党のバラ撒きのコロナ対策を批判する財務事務次官・矢野康治の寄稿が『文藝春秋』十一月号に載ったのだ。記事の行間に、影の薄くなった前首相・菅義偉の・・・