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政治

「大宏池会」再結集という幻想

岸田の政権基盤がはらむ脆さ

2021年11月号

 勝てば官軍とはよく言ったもの。艱難辛苦二十八年ぶりに自民党総裁派閥となった宏池会(岸田派)の鼻息が荒い。
 岸田執行部は、保守分裂で衆院選公示直前まで公認問題でもめていた山口三区で、宏池会のプリンス、林芳正に軍配を上げ、現職の河村建夫は引退を余儀なくされた。長崎四区、静岡五区の両選挙区では、世論調査で後れをとっていた岸田派候補を公認した返す刀で、群馬一区では元首相、安倍晋三が強く推していた前職の尾身朝子を比例区にまわす荒技を繰り出した。つい最近まで「一強」と恐れられ、自民党を意のままに動かしてきた元首相にかつてない屈辱を味わわせたのだ。主導したのは麻生派出身の幹事長、甘利明だが、岸田の意向を踏まえた決定なのは言うまでもない。
「もう大宏池会はできているんだよ」
 宏池会幹部に、岸田がなぜそんなに強気なのかと問うと、こう即答された。「大宏池会」とは何かを探る前に、最も古い自民党派閥である宏池会について説明せねばなるまい。

予想される河野の脱会

 自民党結党から間もない昭和三十二年・・・