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連載

日本の科学アラカルト 135

マイクロマシンの動力源に 「生体分子モーター」の可能性

2021年11月号

 医療の現場では、手術を支援するロボットが市民権を得ている。米国メーカーが販売する「ダヴィンチ・サージカルシステム」により、内視鏡手術は大きく進化し、患者だけでなく医師の負担も軽減した。先ごろ、日本市場に新型のシステムを投入すると報じられたが、今後も市場拡大が期待できる分野であることは間違いない。
 ダヴィンチが手術「支援」ロボットである一方、今後期待されているのは体内に入り込み、治療を行う超小型ロボットだ。SF映画やアニメの世界の話のようだが、体内の患部に接近し、適切な治療行為ができるロボットがあれば、医療は大きく変化する。
 すぐに実現する技術ではないが、医療用への応用も期待される「マイクロマシン」の開発研究は、日夜進められている。
 ロボットというからには、外部からの命令で、もしくは自律的に移動する機能が必要になるだろう。現在、カメラや録画機能が入ったカプセルを飲み込むと、胃や腸などを撮影しながら最終的に排泄されるシステムが実用化されている。胃カメラや大腸カメラよりも負担が少ないシステムだが、カプセルに移動機能が付加されているわけではないので、マイク・・・