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社会・文化

政治家の「言葉の劣化」を憂う

国を蝕む「甘い嘘」の氾濫

2021年11月号

「寄り添う」「誰ひとり取り残さない」「共感力」といった現実性、具体性のない甘い言葉を与野党を問わず、日本の政治家が乱発するようになった。明確な目標、公約を示さないまま有権者から支持を得ようとする狙いだが、政治家自身が空虚な抽象語、意味のない言葉を乱発するうちに論理的思考能力を失い、厳しい政治決断の出来ない指導者に陥るリスクもある。演説によって国民を鼓舞し、交渉によって外交を乗り越え、国家を導くべき政治家が言葉をその場しのぎの騙しの手段としてしまえば、国家は衰亡の道を辿る。日本の政治は言葉の面でも危機に直面している。

「誰ひとり取り残さない」の嘘

 二〇一五年の国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は今や世界の隅々に普及した言葉となった。その理念は尊重すべきとしても、世界に跋扈して引き起こした問題が二つある。ひとつはSDGs十七分野にちなんだ「十七色のカラーリング」のバッジを襟元につけ、肩で風切り歩き回る「にわかSDGsおじさん」。バッジを名誉勲章と勘違いしている。
 もうひとつがSD・・・