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政治

林芳正「重用」に岸田の深謀

安倍の「落日」を早める狙い

2021年12月号

 衆院選後、自民党幹事長と外相の交代人事にはタイムラグがあった。小選挙区で敗れた甘利明氏に代わる幹事長は投開票翌日の十一月一日、直ちに茂木敏充前外相が内定したのに対し、外相の後任内定は岸田文雄首相の初外遊をはさんで六日にずれ込み、十日の第二次岸田内閣発足まで首相が外相を兼務したのである。
 その間、岸田氏はいろいろな人と協議している。安倍晋三元首相と麻生太郎副総裁にも電話で意見を聞いた。関係者によると、二人はそれぞれ意中の候補者を推薦したが、岸田派ナンバー2で参院議員から衆院議員へくら替えを果たしたばかりの林芳正氏については、米中対立を考えれば日中友好議員連盟会長を外相に起用したら誤解されるとして、異口同音に難色を示したという。すでに林氏を有力視する報道が先行していたが、他にも「同議連は中国共産党統一戦線工作部が対日宣伝窓口に使ってきた親中組織だ」といった懸念は岸田氏に少なからず寄せられた。だが結果、岸田氏が選んだのは林氏だった。林外相は就任と同時に議連会長を辞任した。
「安倍、麻生の二人は当然面白くないが、それだけ手順を踏んでなお林外相に決めたのは、安倍外交とは違・・・