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経済

《クローズ・アップ》坂井 辰史(みずほFG社長)

渋々退場する「裸の王様」

2021年12月号

「裸の王様」の退位がようやく決定した。みずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長が一連のシステム障害の責任を取って辞任する。「猜疑心が強い」「現場軽視が甚だしかった」。みずほの幹部はいま、ようやく坂井社長の「強権」を語り始めた。
 坂井氏は二〇一八年四月、みずほFGのトップに就任した。前任社長の佐藤康博現会長は、現在、子会社のアセットマネジメントOne社長を務める菅野暁氏を後継社長に推した。だが本人にその気が乏しかったことで、ダークホース的な坂井氏が後継社長に躍り出る予想外の展開となった。  
 坂井氏は中核子会社であるみずほ銀行の経験は皆無に等しい。前職もみずほ証券社長だった。  
 そんな経緯も加わって「周囲の声を信じない」(みずほ関係者)といわれた社長は強権的になった。「反論したり、自身の考えに疑問を投じたりする者を次々に遠ざける人事を行った」(同前)。「旧興銀出身ということもあって、商業銀行のビジネスなどは誰でもできるという軽視ぶりが激しく、支店長を一年で異動させ、今年には極端な店舗統廃合を断行するなど現場軽視が甚だしかった」(みずほ幹部)・・・