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WORLD

NATO引き裂く「トルコ」の裏切り

東欧「難民危機」に潜む謀略

2021年12月号

 東ヨーロッパのベラルーシが、中東から欧州移住希望者を集めてポーランドやリトアニアに送り込んでいる問題で、トルコの暗躍が浮き彫りになっている。  
 北大西洋条約機構(NATO)の加盟国でありながら、陰ではロシアのウラジーミル・プーチン大統領やベラルーシに協力し、中東各地からの難民の欧州渡航に大きな役割を果たしていた。  
 トルコのレジェップ・エルドアン大統領は中東でも、シリア内戦に介入する一方で、バッシャール・アサド大統領の密貿易に手を貸すなど、「ダブル・ディーリング(二重取引)」を積み重ねている。今やNATOの「鬼っ子」的存在で、黒海と地中海東部の安全保障状況は急速にきな臭くなっている。  

ベラルーシとの「黒い同盟関係」

 ある在中東の米国人記者は、「異変に気が付いたのは今年の春ごろだった」と言う。  
 イラクのクルド人自治区やシリアのクルド人居住地域で、「ドイツへの移住に裏技がある」という噂が広まった。それは、ベラルーシ経由だ、という。大半のイラク人やシリア人が、全く・・・