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政治

政界の宿痾「人材払底」を考える

《政界スキャン》

2022年1月号

 十年前、安倍晋三氏が自民党総裁復帰を果たした二〇一二年九月の総裁選第一回投票で、党員票の一位が石破茂氏だったのはよく知られているが、国会議員票のトップが石原伸晃氏だった事実は今やほとんど忘れられている(合計票は、①石破氏②安倍氏③石原氏の順)。何しろ石原氏の推薦人には現首相の岸田文雄氏が名を連ね、選対実務を取り仕切る選挙責任者は現幹事長の茂木敏充氏という将来有望な布陣であった。
 この時、石原氏は最も首相の座に近づいた。つまり、その後「石原政権」が誕生する可能性は十分にあった。投開票一週間前、石原氏は記者たちに「もう当選したようなもんでしょ」と軽口を叩いていたし、マスコミは直前まで「本命・石原氏と対抗馬・石破氏の対決」と報じていたくらいだ。
 入閣四回、党政調会長、幹事長を歴任、総裁選に二度立候補した派閥会長で、まだ六十四歳。衆院選で落選するまで、経歴だけは次期首相を狙える大物政治家だったはずである。だが、すでに落選前から誰も石原氏をそうはみなさなかった。落選後、さっさと派閥会長の座を放り出し、ポストやカネのみみっちい醜聞にまみれたあげく、支援者にあいさつすべき派・・・