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政治

岸田と安倍の冷たい断層

政権与党に増える「亀裂」

2022年1月号

 自民党に対抗する政党として「五五年体制」の主役とも言えた日本社会党(現社民党)は「二本社会党」とも呼ばれた。左右両派の対立が続き、分裂、衰退の一途を辿った。これに対し「権力」への飽くなき執着によってまとまってきたのが自民党だ。ところが岸田文雄政権の発足とともに党内の分断が進み、これまでの自民党にはなかった亀裂が表面化している。社会党と同じ「二本自民党」に向かうかどうかの岐路に立つ。党内のあちこちでいざこざが起きているからだ。
 二〇二一年十二月十三日、自民党本部で党紀委員会が開かれた。議題は元副総裁の山崎拓の処分をめぐる審査だった。山崎が衆院選で大阪十区から立候補した立憲民主党の辻元清美の応援演説に立ち、辻元への投票を呼び掛けたことに始まる。同区には自民党の前職大隈和英も立候補して、ともに日本維新の会の池下卓に敗退した。これに、大阪府内の小選挙区に擁立した全候補が落選した自民党大阪府連が噛みつき、山崎の除名処分を上申した。山崎は当時、石原派(現森山派)の最高顧問を務めており、同派会長代行だった森山裕(現会長)が元幹事長の二階俊博に意見を求めに足を運んだ。これに対して二階は除・・・