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経済

《企業研究》日本大学事業部

田中一味の黒い宝箱

2022年1月号

 組織は頭から腐る―とは今やすっかり定説化しているが、まさにその典型だろう。付属病院の建て替え工事を巡る背任事件に端を発した日本大学の一連の不祥事は、ついに大学トップだった田中英壽前理事長の所得税法違反(脱税)による逮捕・起訴という前代未聞の事態にまで発展した。
 東京地検特捜部によると、前理事長は日大の取引業者などから受け取ったリベートなどを除外するといった形で二〇一八年と二〇年の所得約一億一千八百万円を隠蔽。約五千二百万円の所得税を免れていたとされる。前理事長は起訴事実をほぼ認めており、修正申告に応じる見込みとされるが、脱税は近年厳罰化しており、法定刑は十年以下の懲役または一千万円以下の罰金。双方が併科されるケースがほとんどだ。
 そのうえ「脱税額の三五~四〇%に当たる重加算税か一五~二〇%の無申告加算税が科されるのは確実」(国税当局筋)。前理事長は隠した所得分をほぼ丸々追徴され、二二年から始まる公判で、〇八年の就任以来十三年を超える長期支配で築き上げてきた利権の構造も白日の下に晒される。
 日本大学事業部―前理事長がこうした利権づくりの中核的存在に据・・・