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カザフスタン「陰謀劇」の深層

新独裁者は「プーチンの傀儡」

2022年2月号

 新年早々、死者二百二十五人、負傷者四千五百人を出した中央アジア・カザフスタンの反政府騒乱は、政権内の権力闘争に発展し、傀儡とみられたトカエフ大統領(六八)が実権を掌握。三十年にわたり独裁体制を敷いたナザルバエフ前大統領(八一)は引退に追い込まれた。  
 平和的なデモ隊に一千人以上の武装過激派が乱入したり、ロシアが素早く平和維持部隊を投入するなど謎の部分が残るが、勝者はトカエフとプーチン・ロシア大統領、敗者はナザルバエフ派と西側諸国、それに中国という構図だ。中央アジアの地政学が変わりつつある。  
 騒乱と権力闘争のルーツは、二〇一九年三月の大統領交代に遡る。高齢のナザルバエフは「院政」に転換し、与党党首、安保会議終身議長などのポストを保持しながら、トカエフ上院議長を大統領代行に指名した。  
 カザフの消息筋によれば、独裁者のナザルバエフは当初、側近中の側近であるマシモフ首相の後継を検討したが、マシモフはウイグル人であることがネックになり、トカエフを選択した。外交官出身で、権力欲のないトカエフなら安心と考えたようだ。  
 マシモフはトカエフ・・・