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WORLD

新たな「バルカン危機」の懸念

イスラム三大国の不穏な「介入」

2022年2月号

 バルカン半島と言えば、「ヨーロッパの火薬庫」という歴史的呼称でおなじみだ。第一次世界大戦の引き金となった「サラエボ事件」(一九一四年)以後も、多民族・多宗教のこの地域一帯は、欧州の不安定化や紛争の源だった。  
 歴史的な紛争多発地帯で、トルコ、サウジアラビア、イランという三つのイスラム教国が、急速にそれぞれの勢力拡大を進めている。これ自体が不気味な動きである上に、ボスニア・ヘルツェゴビナでは、セルビア人勢力の分離運動が加速し、新たな「バルカン危機」への懸念が強まっている。

経済圏作りを夢見るトルコ

 一月に世界のメディアの話題を独占した、テニスのセルビア人スター、ノバク・ジョコビッチ選手。ワクチン未接種の同選手が全豪オープンに参加できるか否かの騒動で、セルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領は、ひときわ声高に母国の英雄を支援した。
 この騒動のさなか、国際政治の新潮流が図らずも浮かび上がった。メディアがブチッチ大統領を追いかける中で、同大統領がトルコの首都アンカラを訪問し、レジェップ・・・・

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