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EU官僚「独善強硬」に渦巻く批判

欧州民主主義「危機」の根源

2022年3月号

 原子力発電は環境保護に貢献する―。欧州連合(EU)の執行機関にあたる欧州委員会が二月初めに示した「タクソノミー」を巡る提案に、首をかしげた人は多いのではないか。
 タクソノミーは持続可能(サステナブル)な経済活動を定義し、温暖化防止に貢献する民間投資を促す仕組みだ。提案はそのタクソノミーのリストに、原発と天然ガスを加えた。欧州委の見解では原発や天然ガスは、再生エネルギー中心の経済への移行期に重要な役割を示すものだと位置付けられた。
 原発のリスト入りは、フランスの働きかけが強く影響したとみられる。同国は電力供給の七割を原発に依存するためだ。一方、ドイツは原発には反対するが、ガスは同国にとっての重要なエネルギーで、経済界にはリスト入りを歓迎する雰囲気がある。EU内の両大国の顔を立てた内容とも言える。
 だが、提案に至るまでに、EU加盟国や市民の間での十分な議論が尽くされたとは言いがたい。特に原発は放射性廃棄物など「核のごみ」が残り続ける。発電時に二酸化炭素を排出しないからといって、「サステナブル」と認めるには異論が多い。オーストリアやルクセンブルクは提案の・・・

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