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サウジとUAEの深刻な「不和」

アラブ産油国の秩序に「異変」

2022年3月号

 湾岸産油国の二強、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)が亀裂を深めている。米国のドナルド・トランプ大統領時代には、強固な同盟関係を誇ったが、ジョー・バイデン大統領の中東離れが進む中で、両産油国は独自路線を模索しなければならなくなった。
 UAEは新たに国交を結んだイスラエルとの関係を軸に、全方位外交に乗り出している。ウクライナ危機で原油価格が高騰する中、米国も外交面でUAEに肩入れしている。サウジの実権を握るムハンマド皇太子は、バイデン大統領と言葉を交わすこともできず、いら立ちを深めている。

三国合意で蚊帳の外のサウジ

 中東産油国の外交舞台はここ数年、二人の「ムハンマド皇太子」が仕切ってきた。
 UAEでは、アブダビ首長国のムハンマド皇太子が事実上の最高権力者だ。UAEの元首は、アブダビのハリファ首長だが、健康問題があって近年は表舞台に出ていない。最近はアブダビ皇太子をMBZ(ムハンマド・ビン・ザイード)、サウジ皇太子をMBS(ムハンマド・ビン・サルマン)と、頭文字略称で呼ぶこと・・・