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日台関係を揺るがす「TPP問題」

岸田政権は蔡英文を見捨てるのか

2022年3月号

 台湾の蔡英文政権は二月八日、東日本大震災の被災地、福島など五県産食品の輸入解禁に踏み切った。これは蔡氏にとってリスクを取った大きな賭けだった。野党国民党が猛反発する中、蔡氏は解禁の見返りとして「環太平洋パートナーシップ(TPP)加盟に向け日本から支援が得られる」と訴えてきた。岸田文雄政権からはしごを外されるような事態になれば窮地に陥る。「ポスト蔡」を決める二〇二四年の総統選挙で、民進党が野党に転落する可能性すらある。
 国際社会から孤立している台湾にとって、最重要な課題はTPPにいかに早く入るかだ。昨年九月に加盟申請して以降、台湾メディアは連日のように特集を組み社会全体に期待が高まっている。与野党問わず「加盟反対」の声はない。
 台湾は中国が主導する地域的な包括的経済連携(RCEP)協定から排除されている。TPP加盟に失敗すれば、国際貿易統合の大きな流れに乗り遅れてしまう。
 中国は台湾とほぼ同時にTPP加盟への申請をしている。中国が先に入るようなことがあれば、必ず台湾の加盟に反対する側にまわり、台湾の加盟は絶望的になる。
 中国より早くTPP・・・