三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

政治

有事で呑気な岸田文雄

コロナとウクライナで「無為無策」

2022年3月号

「岸田さんは前任者に恵まれている」
 与党幹部のこの言葉ほど首相岸田文雄の政権運営の現状を的確に表しているものはない。前任者に比べると「よりまし」という意味だからだ。言うまでもなく「前任者」の一人は前首相の菅義偉のことを指す。昨年十月の首相就任直後に「あらゆる事態を想定して先手先手で準備する」と語っていたのも菅との違いを意識したものだった。菅は国民世論を無視して東京五輪の開催に踏み切り、コロナ感染拡大を招き、支持率低迷の果てに政権を失った。しかし、岸田も結果として菅と同じ轍を踏む。全国で十万人を超える新規感染者数を記録、死亡者数も急激に増加し「第五波」を超えた。
 感染状況が落ち着いていた昨年十月から十二月までのいわゆる「黄金の三カ月間」に「ワクチン、接種会場、打ち手」の確保という必須の準備を怠ってきた。一向に感染拡大はピークアウトせず、むしろ重症者や死者数は増加傾向にある。ワクチン接種をめぐる岸田の「一日百万回接種」も完全に掛け声倒れ。それでも「経済を動かせ」との自民党内の声に押されて入国者を制限する水際対策の緩和に舵を切った。結果として「中途半端な決断で官邸内に・・・