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政治

《罪深きはこの官僚》佐原康之(厚生労働省健康局長)

感染症法 「改正阻止」した奸物

2022年3月号

 政府は一月十七日に開会した通常国会に新型コロナウイルス患者の病床を確保するための行政権限を強める感染症法改正案の提出を見送った。マスコミは「夏の参院選を控えて、権利の制限が絡む与野党の争点を減らす狙い」(日経新聞一月十八日)と解説するが、実態は違う。真の理由は「医系技官の利権維持」(厚生労働省関係者)のようだ。
 この法律を所管する健康局の局長は佐原康之。一九八九年に金沢大学医学部を卒業後、厚生省(当時)に入省した医系技官で、昨年九月、健康局長に就任した。
 二〇二〇年六月、自民党行政改革推進本部が感染症を担当する危機管理監の新設や専門家会議の常設化を提案するなど、与野党から国の司令塔機能の強化が求められてきた。法改正で厚労省の権限が強化されるのに佐原は抵抗した。
 理由は「責任を追及され、下手をすれば権限削減に繋がりかねないから」(同前)だ。コロナ対応で、厚労省は「通知」を濫発してきた。「通知」は行政上、「技術的助言」にすぎず、法的拘束力はない。責任は厚労省でなく、都道府県が負う。安全な場所から指図だけする現状の体制こそ、佐原たちにとって好ましいのだ。・・・