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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》日本公衆衛生学会

コロナで最悪の「役立たず集団」

2022年3月号

 苦境に直面した時、その筋の専門家が公共のために知識と経験を用いれば、いつか暗闇を抜けられる。利権に目がくらめば、出口は見えない。新型コロナウイルスに立ち向かう世界の公衆衛生の専門家と、迷走を続ける日本の専門家の違いは、そこにある。
 日本で公衆衛生の専門家が名を連ねる組織は「日本公衆衛生学会」だ。一九四七年に発足し、現在の理事長は大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座公衆衛生学教授の磯博康が務める。ホームページで「九千人を超える会員」「社会医学分野での最大規模の学会」と誇らしげに紹介する割には存在感が薄い理由を、会員は「科学的に正しいことを発言すると利権を損ねるため、あえて目立たないようにしているからだ」と説明する。
 ホームページに載った新型コロナ対策や声明を読む限り、専門家集団の発信としては物足りない。会員の最新研究の紹介がないことも、「研究は二の次」という疑念を抱かせる。
 磯が「抱負の柱」に掲げるのは、「公衆衛生人材育成の強化と会員の拡大」「関連学会との連携・協働の強化」「政策提言」「公衆衛生研究の充実」の順で、研究の充実が最後なのは示唆的だ。{・・・