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WORLD

中東同盟国で進む「米国離れ」

産油地帯に広がる「秩序の空白」

2022年4月号

 ウクライナ戦争を契機に、アラブ産油国が「米国離れ」を鮮明にしている。
 米政府の強い要請にもかかわらず、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は、ロシア制裁やウラジーミル・プーチン大統領への非難に加わっていない。
 UAEは三月中旬、人権侵害を非難されてきたシリアのバシャル・アサド大統領を賓客として迎え、同大統領のアラブ世界への復帰に道を開いた。
 ジョー・バイデン米大統領は就任以来、中東での米軍駐留を減らしている。最近は中央アジアや南アジアを含めても「三万人余り」(米中央軍司令部)という、今世紀最低の水準になった。
 アラブ産油国は新事態への対応を急いでいるが、ロシアと中国との対決のさなかに、中東同盟国が離反していることに、米内外で懸念も強まっている。
 アサド大統領のUAE訪問について、ある米紙中東担当記者は、「油断していた。両国は間違いなく接近していたが、この時期の訪問はまるで予想外だった」と言う。
 米国務省は声明を発表し、「深く失望し、憂慮する」とした上で、他のアラブ諸国に対して「アサド体制の恐ろしい残虐行為を・・・